一章の1 庭瀬

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 どう大変かを伝えようと必死に言葉を繋ぐ僕の目に、卵が映る。 「何。どうしたの。白羽? ねえ。何を言っているかわからないわよ」  五月さんの声が頭に反響する。  唇が渇くのを感じていた。五月さんに卵のことを伝えていたんだけど、舌が上手く回らない。 「え? 卵を買ってるの? 確かに特売日は今日だけれど、駝鳥(ダチョウ)サイズは売ってないんじゃない?」  おかげで五月さんからの返答も、どこか突飛な答えになっていた。  悪寒が走る。大体、卵なんてどこから出てきたのか全く分からない。  気付いたら、前方、数メートルの位置に浮かんでいたんだ。  実際に、この場に存在する僕ですら、言葉に困る有り様に、電話口の五月さんに伝える術がない。 「えっと、学校にいるんだ。理解できないんだ」  舌が回らない。思うことが出てこない。携帯を持ってる手が汗ばんだ。  卵は、ゆっくりと地面に落ちてくる。そして、丁度、花壇に突き刺さった立て札の足下に落ちた。  電波が悪くなって、五月さんの声に雑音が混じる。通常では考えられない事態だ。  どう説明するも、声が裏返って言葉にならない。
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