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卵が、空から、降って、きた。
単純にそれだけ伝えて、僕は携帯の電源をそのままにしたまま卵にゆっくり近寄る。
手を伸ばした先で、星が描かれた奇妙な卵が何の前触れも無く割れた。
「よう」
「やあ」
卵の殻から飛び出した異世界生物に挨拶されて、僕が返した答えがそれ。
その拍子に、電源が切れた。切ったんじゃなくて切れたんだ。
「なんや。そのけったいなもんわ」
「あ、ああ。これ。携帯って言うんだ」
「喰わせろっ」
「うええっ」
頭巾からはみ出した尖った耳。細い狐の目。マスコット並みの二等親がいきなり僕の携帯を口に咥えた。
手が空になる。汗ばんでいた手に重みが消えて、僕は振り返るしかできない。
幻想好きな母さんなら、有無を言わさずお持ち帰りしそうな生物が、携帯を噛み砕いている。
現在進行形で。
僕は、それを見守るしかない。
「マズっ」
「あ、うん。それ機械だからさ」
良く、言葉が出た。自分でも関心する。相手は、笑いを取ろうとかそんな様子は微塵も無い。真面目にそれがなんなのかわからなかったんだ。
僕は、そいつが投げ捨てた破片を拾った。これで、外部との通信は断たれたと言うことになる。
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