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「むっ。この阿婆擦れめ。やりおったな?」
狐風情の神、着物を乱して叫ぶ女に忌々しげに文句を発す。
女は黒き粒子となりて戦乱の庭へと飛び出さん。
その際、女の首に絡みついた鎖、小さき音をなして狐の足下に落ちけり。
その鎖、無数の蛇となりて狐の足に巻き付き噛みつかんとす。
狐、口元に笑み浮かべてそれら斬り払い、女の粒子追わんと床を蹴り、部屋を抜けり。
その折り、女が残した簪に気づき、呪いの文字に口元を歪めて笑いける。
戦乱に不穏の風が舞い上がり、現在への路は開かれん。
吹き荒れる風と白き闇の狭間に浮かぶ、蒼き光の渦を消す方法も無しに、神は屋根の瓦踏みしめて簪、握り、目を細めて己が身の未熟さに歯噛みしめん。
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