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「話さんでも、五月達は知っている。鍵を無理矢理こじ開けるつもりは無い。ただの。知ってて欲しいんわ、呪われてる言う事実や」
狐の真面目な話しも、その緩んだ表情からでは納得できやしなかった。
「ああ、そう。だからって、あなたを神とは認めないからね」
だから、言うことだけはきっちり言って置く。神様のイメージをしこたま破壊してくれたけったいな生き物に情を与えるつもりもない。大体にして、私の帰りの楽しみを、机にぶちまけた恨みは消えない。明日の予定を、目を輝かせて考える白羽に狐を投げ捨て、私は散らかった机を片付けた。
「呪いって何? 僕にも付いてるのかな」
グラスを流し台(シンク)に片づける後ろから、嬉々とした白羽の声が響く。気にはなったものの、オーナーの視線を感じてさっさと店を出ることにする。
この場から、私のマンションまでは差ほど遠くない。
狐の事は、白羽の知り合いのおじさんが作った新手の腹話術人形だと説明して、三人で外に出る。
秋に近い夜は澄み切り、ネオン街は賑やかさを増していた。
白羽は未成年だ。其方に出向く事は出来ないからと、秘密裏に選んだ裏道を歩く。見付かれば私は務所送りだ。
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