幕開

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神は佐久間城の屋根から飛び降りん。 草鞋は俄かに雪に沈み、足跡を点々と残して風に揉まれん。 神速で女の粒子にまとわりつかれたその人々の前に姿現し、乱れた忍服の襟直さん。 心身凍る大地に戦う忍びの軍勢。相対するは、武士と名乗る屍と人ほどある犬の群にありけむ。 その内、数名の人々、城より飛び出した粒子の生贄となり、動き止められ、口々に神にその意を問う。 「お主ら、よう聞け。忍路(オショロ)がお前等に呪いを掛けて時を渡った。今からお主らをその地へと飛ばす。記憶のほどは、失うやも知れぬ。それによりて悲劇が起きるやも知れぬ……しかし、この地に居てはお主らを助けることはできん」 粒子にまとわりつかれし六人の人間は、一方的な神の言い種に怒り露わさむ。 しかし、各々の意志、逆らうことできず。 溢れんばかりの光に飲み込まれて、時、渡りけむ。 「すまぬ。わしの失態で、お主らを地獄に落としてしもうた。やはり、わしはただの狐なのかも知れぬな」 忍者服という奇妙な集団の服を纏て、狐姿の神は、地平線にくすぶる太陽を見つめん。 日元の国より始まりし所業は、次元を越えてその蔓を絡み合わさん。
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