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「はいはい。化粧落として、お風呂行くから、適当にしてて」
「うん。そうする」
何度か暇な日に、遊びに来ている白羽は、勝手にテレビを付けて見始める。
私と白羽が知り合ったのは、数年前の夏。まだ、蝉時雨が泣き叫ぶ頃の出来事で、海で溺れた私の友達を、まだ、中学生の白羽が助けてくれたのが切欠だった。それから、何度か会って遊び、白羽の親友である銀矢ともそれなりに、仲良くなった。
年の差はあるが、疚しいことは何にもない。暇つぶしにご飯を食べて、ゲームセンターで遊ぶくらいの仲だ。私にとっては弟みたいなもので、留置場にも何度か迎えに行っている。
しかし、あの神様という胡散臭い狐の知識も情報も記憶はない。良く、白羽は信じる事が出来たなと思う。私なら連れ回す事は愚か、耳も貸さないだろう。
化粧を落として、風呂をさっさと済ませてリビングに戻る。
机に並べられた菓子一式は、後から食べようと戸棚に入れてたものだ。
「あんたら、いい加減にしなさいよ?」
白羽と狐から袋を取り上げたが、名家から取り寄せた限定品のせんべいは粗方喰われた後だった。
頭に巻いたタオルがズレる。早いところ髪を乾かさねばとドライヤーを手にテレビを見詰めた。
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