一章の2 五月

13/14
前へ
/320ページ
次へ
「白夜の神主も遂に、認められたのかしら」 「神主。テレビの取材の話なんかしてなかったのにな」 「会っていたの?」 「先週の金曜日に、銀ちゃんについて聞きに行ったんだ。ほら、銀ちゃんが刺された次の日――話は聞いてくれたけど、珍しいくらい素っ気なかった。取材があれば、多分、はしゃいで娘の輝美ちゃんと写メの一枚も送って来るよ」  確かに。白夜の神主は、地域的にも御祓いと動物愛護団体の核として存在する有名人だ。性格は目立ちたがりやのひとつに尽きる。口癖は、いつか、二次元世界の巫女さんを悪い神主から救う――だ。  小柄な爺ちゃんが、画面越しに真顔で語る推論を聞く。それが、あからさまに現実派を挑発している辺りは、ある意味恐怖だ。  白髪、神主特有の着物と草履。鼻下に生やした髭。年は、五十半ばで身長は、小学生高学年の女子程度。白髪で隠した髪は、目にまで掛かる。言っては悪いが、町内会の怪しい人ランキングで堂々の成績を上げることが出来るに違いない。ただ、茶目っ気満載の性格が功を勝して、手首に銀の鎖を付けた経歴は無いらしい。  その神主が、テレビ画面から消えると狐がパジャマの裾を引いてきた。  付け忘れた円い眼鏡を手に、目線だけを下に落とす。
/320ページ

最初のコメントを投稿しよう!

65人が本棚に入れています
本棚に追加