一章の3 小雪

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 今時、古風な名前の公園は、私みたいな夜行性の人間が集まる場所だった。  安らぎを求める輩を捕まえて食らう場所。顔見知りが、明日には敵となり姿を現す魔窟。所謂、チャット場にあるナリチャと同じで一日限りの契約を結んで、寂しさを埋め、全てから逃げ出せる空間。  廃止された不思議派が編み出したナリチャ。私にはどうでも良い娯楽の一種。それに見立てた鰯雲公園は、暇を持て余した若者が、集う場所だった。  公園の隅には、殴られた浮浪者が呻く。昨今流行りの浮浪者狩りも目の当たりにすれば、失笑するしかない。  私は、その先にある噴水へと足を運ぶ。先に到着していた紅葉(くれは)と北斗を見付けて走り寄る。 「小雪。遅いぞ」 「ごめん――いきなり呼び出して、瑚吾(こあ)と珠希(たまき)は?」  紅葉の苛立ちに、後二人を捜す。 「来ないってさ。後から連絡入った」  答えた北斗に目線を向ける。何時ものメンツが揃わないのが、残念だった。  私と紅葉と北斗、胡吾、珠希の四人は、訳あり仲間。  学年は同じ高校三年生。ただ、胡吾だけは年遅れで一歳下だった。  生活環境の違う五人で、夜遊びを初めて三年。皆、行き着く場所まで墜ちている。
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