一章の3 小雪

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 墜ちると言っても、薬(ジャブ)に手を出すとかそんな類の墜ち方じゃない。  情緒不安定な精神面を利用されて、買われ――飼われた。  だから、私の意識は、飛ぶ。それは、日常で月日を経る事に激しく狂う。周りから言えば発狂。情緒不安定では語れない有り様。 「今日はどうする」  今居る彼等は、それを知っている。そして彼等もまた、イル・ドック(狂犬)の仲間。 「どうもしないかなあ。東区の馬鹿を黙らせるというのはどう?」  話を振られた私は答える。東区には、小さな団体がある。名前を葉月と言って、狂犬と対立しているだけの話だ。偶に、喧嘩を仕掛けては強さを競う。単独で殴り込んだ記憶もあるが、葉月のリーダーとは決着が付かない。  そんな私を、周りは冷たい眼差しで見送るだけ。一度、狂い始めた私を、止める事が出来ないと、紅葉達は言う。  確かに、二度程、紅葉を病院へ送ったはあると聞いた。あの日のことはもう覚えていない。究極的に都合の良い神経をしているのか、大半の出来事は一夜で忘れてしまう体質だった。 「いや。東区は止めといた方が良い。最近、サツ(警察)の出入りが激しいらしいって話だから」 「見回りの強化ってこと?」
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