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私の知るところではない。
美作が振り抜いた刃を鞘に納めた。怪物の息の根を完全に止めたことを確認し、何も言わずに去る。
怪物が残した異臭が、茫然と佇む店内に広がった。再び襲う吐き気に、私は胸元を抑え、そのままへたり込む。
紅葉が妹を抱き締めたまま動かない光景を見るのがやっと。
怪物の臭気には、身動きが取れない。鼓動だけが速まり、息遣いが荒さを増した。
「てるみ……嘘だ、おい、動け、なあっ」
紅葉の声が喫茶店を埋める。私は、その場にうずくまるだけ。駆け寄る術もなく混沌を眺める。
「小雪。外に出よう」
連絡を付けて戻って来た北斗が、私の腕を取る。
驚き振り返ると、険しい顔付きの北斗に嫌な予感を覚えた。
生臭い喫茶店からすり抜けて、北斗の手を振り払う。
「何よ」
「処刑者が動いてる。ソルティの連中だと美幸様から言われた」
「ソルティって、ソルティカンパニー?」
「ああ。処刑者オショロ。現実派所属の調教師だという情報を貰ったよ」
「厄介ね。北区の連中目を付けられるようなことをしたの?」
「いや、輝美がなにかをやらかしたらしい」
北斗の不穏な言い回しが気になった。
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