一章の4 美作

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「それは、分かった。然し、春日の娘を見付けてどうする? 私は殺人犯になる気はない」 「違います。春日の長女を青葉の嫡男から守るのが私たちの仕事です。青葉の嫡男は、必ず、春日の長女を闇に貶める存在となり、引き金となります。まず、嫡男に関わらんように説得するしかありまへん。だけど、私ひとりでは難しい次第、どうしても、お話を知っているお二人に手を貸していただきたいと思うてます」  車が、急停車した。周りは暗く、場所は判別できない。ただ、街から離れたことは確かだ。 「美作様、五月――危険に巻き込んだことは、申し訳なく思います。けど、どうしても、他に頼れる人がありません」 「――昔のよしみ。とはいえ、刀を振るのは怪物だけと決めている。それでも構わないのなら力を貸すよ。それで、春日の娘は今、どこに?」  私は、訊ねていた。 「おおきに。助かります。春日の長女は、東地区にあるマンションに、ひとり暮らしをしております。歳は十六、七と聞いてます」 「青葉の嫡男は?」 「西地区にある一戸建てに両親と住んでいた記録があるのですが、三歳の時に放火があり、行方知れずとなっております」 「なるほど、それで、居場所が割れている方を優先しているのか」
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