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それを見送った五月が、やっと口を開いた。
「白夜神主の妹君? それは初耳。知っているのであれば、教えてくれれば良かったものの」
「てっきり、シナも知っていると思っていたのよ」
「いや、知らない。白夜の神主の素性は聞いたことがない」
私は、素直に答えた。
「なら、白羽と神主に会って聞いてきたら良いわ。明日、神主に会いに行くといってたから」
「五月は話してくれないのか?」
「今日はなんだか疲れちゃった。久々にシナにも会えたし。ね、呑もう?」
応えてくれない五月の顔をまじまじ見つめていると、その顔がふいに近寄った。
五月が見せる眼鏡奥の真っ黒な眼差しと口許にある悪戯な笑みに、私は弱い。誘いを断ることも出来ずに五月の部屋まで移動する。振り返った五月が真剣な面持ちで、とんでもないことを口にした。
「そうだ。神様が居るから驚かないで。詳しい話は呑みながら教えるから」
私が五月に構ってやれないだけに、変な宗教に目覚めたのかと思うと少しばかりやり切れなかった。玄関の鍵を開き掛けた五月を抱き締めたかったが、五月はそれを見事にスルーして、扉を開く。
伸ばした手が見事に空を切っていた。中には二等親のぬいぐるみが出迎える。
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