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「…………ろ!……か?」
(はは……。願いから幻覚が見えちまった。
俺様最低だな……。
でも、幻覚でもいい……。
もう一度、誰かに仕えたい……。)
佐助がゆっくりと目を開けると、
そこには一人の少年がいた。
栗色の長い髪を後ろで縛り、
真っ赤な鉢巻きをしている。
少年は佐助が目を開けると微笑み、
小さい手で彼の頬にそっと触れた。
「気がつかれたか……。
噂には聞いていたが、
まさか本当に忍とやらがいたとは。」
「リアルな幻覚だな、あんた。」
「安心せい。拙者は幻覚等ではない。
お主……大丈夫か?名は何と申す?」
「飛翔……佐助……」
「佐助か……。よい名だ。」
少年の言葉で佐助ははっとした。
彼がまだ忍になりたての頃、
他の悪魔に何度も襲われ、
今回のように死にかけていた。
そして、少年のように助けてくれたのが、
死んでしまった魔王だった。
「はは……。何ソレ……。
願望が地味に叶ってるじゃん。」
「佐助……?」
「あんた……名前は?」
「拙者は幸村 火焔。よろしく。」
火焔はそっと微笑むと、
小さな体で佐助を運ぼうとした。
それに佐助はかなり驚く。
「ちょ、ちょっと坊や~。
俺様結構重いっしょ?
無理はしなくていいんだぜ?」
「親方様のところまで運ぶ!
このような場所で眠っていては、
風邪を引いてしまう上に、
下手をすれば死んでしまう!
それがわかっているのに見捨てるなど、
拙者には……できぬ……!」
まるで砂時計が戻ったように、
同じことを繰り返しているような感覚。
佐助はそっと微笑むと、
小さな背中に揺られながら気を失った。
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