絶望に揺られて

2/2
前へ
/12ページ
次へ
「…………ろ!……か?」 (はは……。願いから幻覚が見えちまった。 俺様最低だな……。 でも、幻覚でもいい……。 もう一度、誰かに仕えたい……。) 佐助がゆっくりと目を開けると、 そこには一人の少年がいた。 栗色の長い髪を後ろで縛り、 真っ赤な鉢巻きをしている。 少年は佐助が目を開けると微笑み、 小さい手で彼の頬にそっと触れた。 「気がつかれたか……。 噂には聞いていたが、 まさか本当に忍とやらがいたとは。」 「リアルな幻覚だな、あんた。」 「安心せい。拙者は幻覚等ではない。 お主……大丈夫か?名は何と申す?」 「飛翔……佐助……」 「佐助か……。よい名だ。」 少年の言葉で佐助ははっとした。 彼がまだ忍になりたての頃、 他の悪魔に何度も襲われ、 今回のように死にかけていた。 そして、少年のように助けてくれたのが、 死んでしまった魔王だった。 「はは……。何ソレ……。 願望が地味に叶ってるじゃん。」 「佐助……?」 「あんた……名前は?」 「拙者は幸村 火焔。よろしく。」 火焔はそっと微笑むと、 小さな体で佐助を運ぼうとした。 それに佐助はかなり驚く。 「ちょ、ちょっと坊や~。 俺様結構重いっしょ? 無理はしなくていいんだぜ?」 「親方様のところまで運ぶ! このような場所で眠っていては、 風邪を引いてしまう上に、 下手をすれば死んでしまう! それがわかっているのに見捨てるなど、 拙者には……できぬ……!」 まるで砂時計が戻ったように、 同じことを繰り返しているような感覚。 佐助はそっと微笑むと、 小さな背中に揺られながら気を失った。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加