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目指すもの
佐助は屋根裏部屋で目を覚ました。
ボサボサの頭を整え、
小さな穴からそっと下を覗く。
いつものように燈紫 信玄と火焔が組手をやっている。
今日も異常はない。
「なんか、懐かしい夢……」
ほうけていると、下から思い切り薙刀が刺さった。
慌てて避けたが、あと一瞬遅ければ、
そこは血の海になっていただろう。
「ちょっと頭領~。酷いんじゃない?
避けれたからいいけどさ、
もし気付かなかったら俺様死んでたよ?」
「修行が足らんぞ、佐助!」
「旦那はいいけどさ……」
そう言って佐助は笑いながら屋根裏から降りた。
忍びらしいと毎度二人は拍手する。
昔は「俺様忍びだから」と突込むが、
最近ではそれが無駄だということに気付き、
諦めて、スルーすることにしている。
「佐助、久々に手合わせ願う。」
「旦那、俺様寝起き……」
「「キビキビせんか!」」
声を揃え二人は言った。
忍はいつも神経を鋭くしているもの。
それが二人の忍のイメージだった。
だが、目の前にいる自称忍は、
平和ボケは当たり前だが、
どちらかといえば、忍というよりは母親のよう。
「佐助、お主本当に忍か……?」
「旦那も頭領も、俺様に何期待してんの?
人間界の忍と魔界の忍は違うの。
魔界の忍っていうのは、魔王の書簡、盾、剣。
魔王を守る為の親衛隊みたいなもん。
しかも毎日やってるわけじゃない。
ちゃんと労働時間が定められてるの。」
佐助はあっさりと二人の夢を壊した。
もちろん自覚はない。
だが、火焔の表情はかなり悲しげで。
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