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夜―――――
佐助は屋根の上で空を見上げていた。
満月の光が、佐助を照らしている。
ふと思い出し手をとなりにやるが、
そこには何もなく、
あるというなら、
夜のせいで冷えた瓦だけだった。
「俺様、ここにいていいのか?」
闇の中からそっと聞こえた。
佐助を呼ぶ、優しい幻聴。
そこにあるはずのない声が。
「旦那……」
「呼んだか?佐助……」
いきなりのことで佐助は驚いた。
足下の方から聞こえたのは、
『今の』旦那の声。
佐助はそっとベランダに着地すると、
声の主、火焔を見つめた。
「どうしたの?旦那。」
「いや。ぽつりと声が聞こえたからな。」
そう言うと火焔は笑った。
そして、団子とお茶を差し出す。
少しゆっくりしろというサイン。
「佐助は、最近変だ。」
「俺様が?そんなことないって!」
慌てて否定し苦笑すると、
声を震わせながら火焔は言った。
無理をして笑うな、と……
佐助は深い溜め息をつくと、
そっと立上がり、昔話を語った。
昔々ある魔界に
一人の幼い悪魔がいました
彼は本当は悪魔と人間のハーフ
普通の悪魔から見ればすぐわかるのに
少年は絶対に認めようとしませんでした
そんなある日
少年は悪魔に襲われました
お前は悪魔じゃない
だから魔界にいる資格はない
少年は泣きました
体はボロボロになりました
雨の中を歩きました
しかし……
少年は力を失いました
歩く力も……生きる力も
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