宿命

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「旦那ぁ!!」 叫んだが、城の部屋にはいなかった。 必死に城中を探し回る。 戦をやっている場所はなかった。 なら、二通りの考えがある。 一つは、幸運にもまだ戦はしていない。 それならばまだ間に合う。 戦に自分も出ればいい。 それだけのこと。 二つ目は、もう終わっている。 戦は終了し、全滅している。 できれば二つ目は避けたい。 城中を探すと、火炎は見つかった。 そこは、信玄の部屋。 だが、いつものような笑顔はなく、 まるで廃人のように光がない。 「旦那……?」 慌ててかけよるが、答えることなかった。 彼の前には、一枚の手紙があった。 佐助は一通り目を通した。 涙は、出なかった。 手紙を元通りにすると、 佐助は再び魔界へと向かった。 【佐助 お主がこれを読む時には、 きっと拙者はこの世にはおらぬ。 拙者を庇い、親方様は息絶えた。 お主の思い、解した。 胸が張り裂けそうなのだ。 今も手が震えておる。 いいか、佐助。 兵に何を言われても決して奴等を追うな。 そして、生きろ。 最後までお主へまともな命ができぬこと、 許してくれ、佐助。        幸村】 「ははは。はははははははははははは」 壊れたように笑った。 何故自分を責めている? 悪いのは悪魔だ……。 悪いのは、火焔じゃない。 火焔に仕えてしまった、 甘えてしまった自分なのに。 「……許さねぇ。」 佐助は手紙をもとに戻すと、 使い魔を使って飛んだ。 向かう先は、魔界。 だが…… 佐助は自らを思い出した。 対価を、差し出したことで。
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