『微妙な関係』     <回想>

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待ち合わせの時間は18時。 俺は待ち合わせの時間が待ち遠しくて仕方なかった。 時計に目をやると。 PM5:30 駅で時間を潰そうと家を出ようとすると携帯が鳴った。 佐藤さんだと思い、画面も見ずに出る。 「もしもし」 「中山ですけど。早上がりの所、すいません。 今、平気ですか?」 電話の相手は佐藤さんではなく会社の後輩の中山だった。 「いいよ。どうした?」 「実はこの間、デザインも図面も提出してる、新宿の喫茶店があるんですけど、分かりますか?」 「お~。中山と新人君で頑張ってやった所だろ?分かるよ。そこがどうかしたか?」 「さっき、店のオーナーさんから電話がありまして、俺と思ってたのと違うと言われて。 今日中に作り直してFAXしろと言われてしまって・・」 電話越しで半泣きになりながら話すのが分かる。 「今日中にって、具体的にどこに手を加えるの?」 「えっと。入口ドア周辺の内装と天井の一部内装なんですけど、オーナーさんから言われた内装色が見つからなくて」 「他の奴に頼んでみたか?」 「今、会社で探してくれてるんですけど、見つからなくて・・・・」 そう言うと電話の先で泣き声だけが聞こえた。 「分かった。今から、そっちに行くから。 俺のパソコンを起動しといてな」 「ありがとうございます」 そのありがとうが声にならない感じだった。 俺は佐藤さんに断りのメールをした。 準備をして会社に急ぐ。 車内で鳴り響くメールの着信音を気にしながら・・・・ 会社に着き、事務所のドアを開けた。 すると、普段は定時で帰る人も皆残っていた。 「相原さん!!」 中山が駆け寄る。 俺は詳しい状況を聞き、早速仕事に取り掛かる。 PM10:30 「ふぅ~。何とか終わったなぁ~~」 「相原さん。すいませんでした」 中山が缶コーヒーを差し出し、頭を下げて言う。 「大丈夫だよ。終わり良ければ全て良し!だから。」 「ありがとうございました」 そう言うと、他の皆にも声を掛けにいった。 この会社に就職して良かったと改めて、皆の協力意識の高さに感動した。
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