『彼女との出会い』   <回想>

2/7
前へ
/53ページ
次へ
3月。 大分、温かくなり春本番がもうすぐというこの時期、いつもの様に車で出勤している俺はエンジンをかける。 ん?エンジンがかからない・・・・・ 何度かけ直しても一向にかかる気配がない。 最悪だ・・・・こんな時に調子が悪くなるなんて・・・ 諦めた俺は電車で向かう事にした。 この電車を使った事で彼女と出会うなんてこの時は思いもしなかった。 今考えると、この出会いは偶然ではなく必然だったのかも知れない。 駅に着いた俺は会社近くの駅を探す。 え~と、どこだっけなぁ~~・・・!!あった! 久々に電車に乗る俺は慣れない手つきで切符を購入してホームで電車を待つ。 暫くして、電車が来た。 朝の通勤ラッシュは過ぎていた為、空いている席に座る。 『ドア。閉まりまーす』 その声と同時に一人の女性が走りながら乗ってきた。 それが彼女との初めての出会いだった。 息を切らし、隣に座った彼女は少し明るめな茶色のロングヘアーで肩から毛先にかけてパーマがかかっていて、ほんのりと甘い香りの匂いがした。 俺はこの時の彼女の事をずっと忘れないだろうと思った。 暫く、電車に揺られていると彼女が席を立ち、ドア側に移動した。 降りるんだ。 俺は自然と彼女の姿を目で追っていた。 ドアが開き、彼女は降りた。 あっ。また走ってる。 そう思いながら、見ていると不意に席にある紙袋が目に入った。 彼女の忘れ物だ! 渡そうとしても、電車は既に走り出していた。 同じ駅から乗るんだから帰りにでも改札の人に渡しておこうと思い、しっかりと紙袋を持つ。 会社近くの駅に着いた俺は紙袋をなくさない様に会社に向かう。 『ワークデザイン株式会社』 ここが俺の勤める会社。 俺はインテリアデザイナーをしている。 小さい会社だけど皆、仲良く、楽しく仕事をしている。 事務所に入ろうとすると、後ろから声を掛けられる。 「相原さん。おはようございまーす」 振り返ると職場の後輩だ。 「おはよう。中山」 この子は「中山 穂花」俺の二つ下で二年前に入社してから、俺が仕事を教えている。
/53ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加