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俺はあれから、一気に暗闇に落とされた様な感覚に襲われた。
もがけばもがくほど出れない闇の中にいるみたいに。
でも、佳奈は生きてる。
その小さな光だけが今の俺を支えていた。
いや、そう勘違いしていただけだった。
その日から、突然幸せを奪われた俺は仕事も力が入らなくなっていた。
いつもの様に楽しい仕事ではなく、まるで魂のない人形のようにただ仕事をこなしていた。
家に帰ってもその状態は変わらず、電気は消え、TVの明るさだけが部屋を照らしていた。
そんな生活が続き、気がつくと年が明けていた。
だけど、今の俺には関係ない事だった。
携帯が鳴る。画面を見ずに出る。
亮平だ。
「勇二さん?大丈夫?元気なの?」
「普通だよ」
脱力感で答える。
「そっか。たまには勇二さんの声を姉貴に伝えてくれる?多分、淋しがってると思うから」
「そのうちね」
俺は何を聞いても無反応だった。
「姉貴の住んでる部屋も親父達が空けて、空になったんだよ。
もう、姉貴の場所は勇二さんだけなんだよ!
頼むよ。せめて、手を握って・・・・」
電話越しで亮平が泣いている
そのまま、無言が続く・・・・
俺は電話を切った。
今の俺にはどんな言葉も届かない。
無意味だと思っていた。
それから数日が経ったある日、携帯が鳴る。
亮平か・・・
電源を切ろうとすると、着信は会社の中山。
電源を切るのを止めて、電話に出る。
「もしもし。どうした」
いつもの俺ではないと感じていた中山が話す。
「あの、クリスマス明けからずっと様子が変だと思ってて、会社の皆も心配してて」
「別に。仕事はちゃんとしてるだろ」
今の俺の声は鋭く冷たい。
「・・そうなんですけど、彼女と何かあったんですか?」
「いちいち、詮索するなよ。もう面倒なんだよ。
彼女は病院のベッドでいつ目が覚めるか分からないんだよ」
一方的に話し電話を切った。
それから、中山から何度も着信が続いた。
着信がなくなってから、暫くするとインターホンが鳴る。
中山だ。
仕方なく家に入れ、俺は何も話さずにいた。
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