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「来てしまってすいませんでした。
何て言っていいか分からないんですけど、私は彼氏に振られて、落ち込んでいたんですけど相原さんがいたから、何とかここまで来れたんです。
だから、今度は私が何か力になれないかなと」
それを聞いても、ただ中山を見つめるだけだった。
「相原さん」
中山がそう言うと、俺を抱きしめた。
「今、こうする事しか思い付かなくて、私を相原さんの彼女だと思って抱きしめて下さい。
近くにいて、分からなかったんですけど、相原さんが好きなんです。
代わりでもいいので、抱いて下さい」
何言ってるんだこいつ・・・・・
好き?代わり?
でも、俺はそのまま抱きしめられた暖かい体温に懐かしさを覚えながら、このまま中山を抱こうと思った。
すると、TVの上から物が落ちた。
それは俺が作った指輪が入った箱だった。
それを見て、我に還り、今までの無気力感から抜け出した。
「ごめんな。俺には中山の気持ちを受け止められないし、代わりなんて思いたくない。中山は中山だからさ」
中山を離し言った。
「よかった。相原さんがいつもの相原さんに戻ったみたいで。
あっ!彼氏と別れたとか相原さんを好きとか嘘ですからね!
そうでもしないと元に戻らないと思ったんで。
じゃあ、帰ります」
中山は急いで家を出て行った。
目には涙が溜まっていた。
ようやく気付いた・・・
俺はやっと闇から抜け出し、微かな光を手にした。
亮平に電話をして、今までの事を謝った。
そして、病室のベッドで眠る佳奈の前に座り、手を握り今日あった出来事などを話していた。
その後も仕事終わりに病院に通っていた。
休みの日は佳奈の実家に行き、行く度行く度にただひたすらに謝り続ける日々が続いた。
それはこれからもずっと続いていく事なんだろうと思っていた・・・・
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