『幸福の道』

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その後、看護師の人が電話をしてくれたのか、佳奈の両親と亮平が来た。 「佳奈・・・」 「・・・!!」 「姉貴・・・」 父親は佳奈の名前を呼び、静かにベッドに近づく。 母親は亮平にしがみついて声にならない様な状態で大粒の涙を流す。 亮平は俺を見て、頭を下げると佳奈を見ながら母親を支える。 「こんにちは」 俺は立ち上がり、挨拶をした。 挨拶は亮平と母親以外にしてもらえない。 やっぱ、佳奈のお父さんには嫌われてるな。 俺は病室を出る。 「勇二・・・」 佳奈が寂しそうな目をしながら、呼び止める。 「安心したら、俺ものど渇いちゃったよ。 ちょっと、外でタバコ吸ってくるよ」 外の喫煙所でタバコを吸いながら、佳奈のお父さんは許してくれないだろうなと思っていた。 すると、佳奈のお父さんと亮平が来た。 「勇二君。タバコを忘れてしまって。一本いいかな?」 勇二君?確かに今、俺の事名前で呼んだよな? そう思いながら、タバコを渡す。 「はい。どうぞ」 「勇二さん。俺もいい?」 亮平は俺の顔を見て、笑顔でそう言った。 「はいよ」 何で笑顔なんだ?ま、いいか。 佳奈のお父さんが口を開いた。 「勇二君。この一年。ありがとう。 勇二君がいなかったら、佳奈は目を覚ます事はなかっただろう」 「いえ。事故に遭ったのは俺と付き合った事が原因だと思ってるので。 それにありがとうなんて言われる立場じゃないです。 俺と出会ってなければ、事故に遭わなくて済んだとおもいます」 「まだ、そんな事を思ってるのか? 確かにあの日俺は勇二君を責めた。 でも、毎日ベッドで眠る佳奈にひたすら声を掛ける勇二君を見ていたら、怒りは自然となくなったよ。 むしろ、佳奈をずっと見てて欲しいと思ったよ。 亮平にもあんな良い人はこの世の中どこ探してもいないって言われたしな」 「お父さん・・・・」 俺は我慢していた気持ちが一気に溢れ、ぼろぼろと泣いてしまった。 お父さんからハンカチを渡され、涙を拭く。 「勇二君が家に来て、謝りに来ていたのも知っていたしな。 あの日責めた事で俺は会いずらくなってしまったんだ。 本当にすまなかった」
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