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お父さんから会ってくれなかった事情を聞き、謝られた俺はしゃべれない程に涙がもっと溢れた。
「これからも、佳奈のそばにいてやってくれ。
ただし、結婚はまた別の話しだけどな。
父親らしく、お前にやらん!と言ってみたいしな」
冗談混じりに話すお父さんの言葉が優しく響いた。
俺は涙を拭って
「・・・・はい。覚悟します」
笑顔で答えた。
「じゃ!先に病室に戻ってるからな」
お父さんは病室に戻っていった。
「勇二さん。泣きすぎだよ」
さっきまで、横で何も言わずにいた亮平が口を開く。
「うるせーよ。亮平。
でも、亮平がお父さんに色々言ってくれたんだな。
ありがと」
「そんな事ないよ。
俺は有りのままの勇二さんを話しただけだし。
それに一番すごいのは勇二さんだよ。
一人の女をこんなに想ってて、俺には出来ないよ。
しかも、眠ったままの彼女だし。
姉貴はマジ幸せ者だよ。
つか、姉貴にはもったいないぐらいだな。
でも、勇二さんには感謝してます。
こんな姉貴を想っててくれてありがとう」
「何?亮平がそんな事言うと、珍しくて、雨が降ってくるよ。
でも、ありがとな」
「俺だってたまには真剣に話すんだから」
今こーして笑って話せるのも、佳奈が目を覚ましたからだと思った。
何だかんだ言って、亮平が一番心配してたしな。
「さぁ~て、そろそろ病室に戻るか」
「そうだね」
病室に戻るとそこは笑顔で溢れていた。
佳奈のその笑顔を見て、改めて目を覚ました事を実感した。
佳奈はそれから、もう眠り続ける事はなく、普段の佳奈に戻っていた。
年が明けた1月10日。
退院が決まった。
この日はまた目を覚ました日の様に皆が集まっていた。
雑談をする俺と亮平に佳奈が
「何してんの!勇二~。亮平~。荷物手伝ってよ」
『はいはい』
声を揃えて返事を返した俺と亮平は佳奈の荷物を持つ。
そして、笑い声がこだまする病室を後にした。
もうここに来なくていいんだと思いながら。
それから、俺と佳奈はお父さんとお母さんに許しをえて、同棲を始めた。
もちろん、結婚の話しはお父さんにごまかされてしまったけど。
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