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会社を出て、足早に駅に向かい、電車に乗る。
・・・こ、混んでる。
夕方のラッシュにぶつかり、紙袋をしっかり抱えながら無理矢理入り込む。
息が詰まりそう・・・・
狭い車内で押し潰されそうになりながら、早く車が戻ってこないかなとそれだけを思っていた。
ようやく駅に着いた電車から降りた俺は一息つく。
夕方のラッシュは避けようと思いながら・・・
改札に向かうと忘れ物をした彼女がいた。
「そうなんです!ピンク色で手提げバッグぐらいの大きさの紙袋なんです。多分、朝急いでて自分の横に置いたまま忘れちゃったみたいで」
「今日はまだ忘れ物があったって報告は受けてないんですよ。見つかった時はすぐにご連絡しますのでこちらの用紙にお名前と電話番号を記入して頂けますか」
「まだ報告がないなら、いいです。お手数かけました」
彼女が駅員さんに必死に説明してる。
諦めたのか、そのまま改札を出てしまった。
はっ!のんびり見てる所じゃなかった。
俺も彼女を追う様に改札を出る。
「すいません!これ、今朝の電車に忘れましたよね?」
彼女に追い付き、声を掛けた。
「え?あっ!!それ!」
紙袋を見た彼女は驚きと嬉しさが混ざった様な表情で言った。
「俺が持ってて、帰りに駅の方に渡そうと思ってて」
彼女に紙袋を渡す。
「ありがとうございます。ホントに大切な物が入ってて。仕事中も気が気でないような感じだったので、ホントに嬉しい・・」
紙袋を大事そうに抱え、涙目で礼を言う。
そんな彼女をちょっと愛おしく思う自分がいた。
「いえ。大切な物がなくならずによかったですね。それじゃ、俺はこれで」
彼女に挨拶をして家に向かう。
「すいません!!」
彼女に呼び止められた。
「はい?」
「あなたみたいな優しい方に拾って頂いて本当にありがとうございました。もし、今お時間があるならお酒でも何でもおごらせて下さい」
「えっ?いや、別に。俺は見返りなんて求め・・・・」
俺の話を遮り、彼女が
「どうしても、おごらせて下さい!!」
彼女に圧倒された俺は半ば強引にお酒をおごってもらう事にした。
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