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「すいません。強引に誘ったりして」
申し訳なさそうに彼女が言う。
「謝らないで下さい。俺もたまにはいいかなって思ってるんで。
でも、覚悟しといて下さいよ。俺ってけっこう食べて、飲みますから」
笑顔でそう答えると彼女は安心した様な表情を浮かべながら
「はい!好きなだけどうぞ」
俺は気になっていた紙袋の中身を聞いてみた。
「あの、その紙袋の中って何が入ってるんですか?ちょっと失礼かもしれませんが」
「中身?ですか?
私、ネイリストしてて、私が今までお客さんにネイルした写真とデザイン画が入ってて。
あとは個人情報がいっぱいなんで」
「へぇ~、ネイリストさんなんですか~。
何か、女の職場って感じがします。
あっ!だから、爪がそんなに可愛いんですね」
「えっ?そうですか。あんまり男の人に言われないんで、ちょっと恥ずかしいです」
照れてる彼女を見て、思わず俺も照れてしまった。
それから彼女と過ごした、この居酒屋での時間はとても楽しくて笑顔が絶える事はなかった。
もっと長く一緒にいたいとさえ思ったが、さすがにそんな事は言えずに時計に目をやると
PM11:00
「そろそろお開きにしましょうか?」
彼女に話す。
「あっ、そうですね。明日もお仕事ですもんね」
『そういえば!!』
俺と彼女が口を揃えて言った。
「え?お先にどうぞ」
彼女に返す。
「いえ。あなたからどうぞ」
お互いに譲り合いをしていたが、俺が話を切り出す。
「お開きなのに名前も知らずに話してたなって思って」
俺は財布から名刺を出す。
「私もそう思ってました」
お互いに名刺を交換した俺と彼女はこの時初めて互いの名前を知った。
帰り際になって自己紹介をして、また機会があれば飲みに行こうと話をした。
「今度は俺から誘いますので、時間があえばまた飲みにでも。
今日はごちそう様でした」
「そうですね。また機会があれば。
お誘い待ってますね」
そう言葉を交わし店を後にした。
この時は可愛い人だなとは思ったけど、まさか彼女になるなんて思いもしなかった。
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