0人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
オキザリスは、湖から少し離れた、木に巣をつくりました。
そして、卵を大事にその巣の上に乗せました。
それから湖へ行き、できるだけたくさん餌を食べ、すぐに巣に戻り、卵を温め始めました。
卵を温めてから、7日目の夜のことでした。
1つの卵がピクリと動きました。
「まあ、なんて元気のいい子なのでしょう。早く生まれてきて下さいね。」
オキザリスはうれしそうに言いました。
すると、その優しい声が聞こえたのか、他の4つの卵も動きました。
「あと少し、お母さんも頑張るわね。」
オキザリスは空腹に耐えながら、それでも優しく卵達にささやきました。
本当なら、父鳥と母鳥が交互に卵を温め、片方が卵を温めている間、もう一方が餌を食べに行くのですが、オキザリスには夫というべきものが行方をくらましているため、それができなかったのです。
「こんな時、あの人がいてくれたら・・・」
オキザリスは悲しげに呟きました。
すると、オキザリスを励ますように卵達が動きました。
「きっと、あなた達はやさしい子に育つに違いないわ」
オキザリスはそのかわいらしい卵達に励まされ、なんとか頑張ることができました。
10日目の朝のことでした。
オキザリスは空腹に耐えかねていました。我も忘れるぐらいの辛さでした。
せめて、水だけでもあればいいのですが、もう湖まで行ける力も残っていませんでした。
「いまここで、倒れるわけにはいかないわ。あと少し、あと少しなのだから。」
オキザリスは必死に自分を説得しました。
最初のコメントを投稿しよう!