62人が本棚に入れています
本棚に追加
天気予報では晴れのはずなのに、朝から厚い雲に覆われていた空から、わずかにしずくが落ちてくる。
「早く片付けないと荷物が濡れてしまう」
作業着のポケットからタバコとライター、それに携帯電話を倉庫の机に乱暴に投げ出し、浩平は手際よく、並んだ荷物をトラックの荷台に積み上げる。
「全く、納期さえ指定すれば絶対に品物が入ると思ってるんですかね?今日の今日なんて無茶ですよね。」
降り出した雨に舌打ちをしながら、河本は荷台の荷物を整然と並べる。
「この不況だ。少々の無理でもお客さんの言う事は聞かなきゃね。河本君は良くやってくれるから助かってるよ。」
浩平も心中は河本と同じだが、立場上、彼と同調して不平を言うわけにも行かない。
「こんな小さな会社で、給料も大して払えないのに、一生懸命働いてもらって感謝してる。」
河本に言った言葉は本心だ。
まだ若いが、彼の仕事ぶりを見ていれば、他の大きな会社でも十分に通用するはずだった。
「専務に言われたら文句言えないですね。さっさと片付けましょう。」
河本は、おどける様にガッツポーズをして見せた。
最初のコメントを投稿しよう!