―終わる一日―

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 ようやく涙を止めた希望は、翔の胸からうずめていた顔を離す。  翔を見上げようとして、それはすぐ躊躇われた。今の今までみっともない姿を見せていたのだ。どういう顔をして目を合わせればいいのか解らない。  今になって冷静に考えてみると、すごく恥ずかしい事だったのではないか。そう思い、ますます顔を上げづらくなる。  どうしたらいいのか。オーバーヒート寸前の頭で思考を巡らせるが、羞恥と焦りに邪魔された処理能力では何も思いつかない。  何も思いつかないまま、希望はあることに気付いた。  今の状態。翔に抱き締められているこの状態の方が、とても恥ずかしいものではないか。 「あ、あああのっ……!」  うつむいたまま、慌てて言葉を口にする希望。 「もう、大丈夫ですから……その……」  語尾に近づくにつれ小さくなっていく声に、翔は小さな笑いを漏らした。  翔は希望の背に回していた腕を解く。  希望は少し名残惜しいと思った。それでも、ゆっくりと一歩後ろに下がる。赤くなった目を見られたくはない。 「帰ろうか。あまり遅くなると、みんな心配するから」 「あ……はい。そうですね」  文化祭が終われば、姉に会える。この人が、会わせてくれる。  その思いを胸に、希望は歩き出した翔の背中を追った。  雨雲は晴れ、空には満天の星が輝いていた。
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