―終わる一日―

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 丘を下りきり、わりと交通量の多い大通りに出たあたりで翔のポケットが振動した。携帯を取り出す。ひかりからであった。 『もしもし、あたしあたし』  希望にも聞こえる大きめの声。 「なんすか?」 『あら、なに? もしかしてお取り込み中だったかしら』  翔は溜息を一つ。ひかりが半笑いなのは見なくても解る。 「切ってもいいすか?」 『切ったらグチャグチャにするわよ』  変わらぬ声色のひかりに、翔は背筋に嫌なものを感じる。グチャグチャは勘弁願いたい。 『まあそれは冗談として』  冗談には思えない翔がいた。 『今日さ、みんなで通明の家に泊まることになったから』 「……は?」  突然の言い渡しに、翔はすべからく困惑する。〝みんなで〟という四文字に引っ掛かりを感じたのだ。  一考する。 「えー、つまり姐さんのいう〝みんなで〟って誰々?」  多少解ってはいたが念のため訊いてみる。 『そりゃあんた、今日の四人に決まってるでしょ』  今日の四人。翔、希望、ひかり、カリン。予想的中。  しかし、翔はもちろん希望もそんな決定は知らない。 「え、あれ?」  当然の事ながら希望は疑念を抱く。 『じゃ、そういう事だから希望を連れてきてね。バイビー』  切れた。なにがバイビーだ。 「…………」  二人して黙りこむ。どうするべきか。 「と、とりあえず行きましょうか」  希望が切り出した。 「でも、親御さんの了承を取らなくても平気か?」 「多分、平気です」  希望はこう言うが、翔としては夜に連れ回して希望の両親に目をつけられるのは避けたい。これからの事を考えると、それは些か以上に厄介だ。  しかし、ひかりの事だ。既に了解を取っている可能性極大。というか百パーセントだ。  つまり、大丈夫と。そう納得した翔は、希望と共に通明の家を目指した。  手を繋いでみようかと迷って、結局やめた。焦らずともよい。今はまだ。
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