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「第2ボタンって一番好きな人にやるもんだよな」  ヤツは今朝、そう言ってた。なのに……。    正門から出て来たその姿を見て、俺は深い溜め息が出た。  女どもにむしり取られたのか……前だけでなく袖のボタンすら、一つも残っていない。   「何だよ! 全部取られちまったんかよ!」  嫉妬と侮蔑を込めた目で睨んだのに、鈍感なヤツは誇らしげに親指を立ててニヤッと笑う。 「俺様モテモテだからなっ。お前は……って聞くまでもねえか」  全てのボタンが残った俺の制服を一瞥して、更に口の端を吊り上げるヤツに、俺はぐっと拳を固めて殴るそぶりを見せつけてやる。 「……ちょっ、待て、待てって!」   「俺がボタン死守したのは誰の為だと……思ってるんだ!」   「ぐえっ」  ガードしてなかった腹に一発くれてやって、膝をついたヤツに背を向けて俺は一人で歩き出す。   「そんなに怒るなよぉ……俺も死守してるって。ホラ」  苦しげにうなりながらも、俺の背中に覆いかぶさってヤツは右手の握りこぶしを開いた。 「お前のボタンも……俺に寄越せ」  俺の掌にコロリとボタンを転げ落とし、ヤツの指先は俺の制服の第2ボタンを優しく撫でる。   「嫌だね。このボタン何番目のだか、わかんねぇじゃん」  拗ね気味で唇を尖らせた俺の頭をくしゃりと撫でて、俺の耳元でヤツは囁く。   「お前にやるんだから2番目に決まってるじゃねぇか」  
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