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「受験終わったら返事するな」
バレンタインにそう言われてから丸1ヶ月が過ぎていた。とうとう今日は……中学の卒業式だ。
偶然にも今日は3月14日。返事を貰うのは今しかない。
「今日は何の日か……知ってる?」
皮肉っぽく返事を促した私の前に立った彼は、学生服の第二ボタンをすでに無くしていた。
嘘……!! 誰にあげたんだろ。気付いてたらわざわざ声なんてかけなかったのに。これじゃまるで断られる為に声かけたも同然じゃん。
一瞬のうちに頭の中を駆け抜けた考えと共に、こみ上げてきた涙をぐっと堪えて私は俯く。
「ホワイトデーだろ。……コレ、お返し」
彼はそう言って俯いた私の掌に、固くて小さい何かを握らせた。
驚いて顔を上げると、照れ臭そうに笑ってすぐに背を向け、彼は男子の輪の中に戻って行く。
私はその感触に確信を持って掌を開く。さっき堪えた悲しみの涙が、別の意味を持って溢れ出る。
彼の学生服の、二番目のボタンが無くなっていたのは、私の為に……だったんだ。
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