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「……お前は間違っている」
「何故そう言い切る?」
「……ダーウィン家は……確かに…………」
俺はそこで言葉を切った。口には出せなかった。
しかし、俺はぐっと息を呑み、強い口調で言葉を発した。
「だが、だからと言ってダーウィン家の……錬金術の全てが間違っている訳ではない。
少なくとも、『錬金術の過ちは、錬金術が破壊する』。
これだけは間違ってはいない」
そう言い終えると、俺は刀を目の高さまで上げ、突きの構えを取った。
「そして、アレハンドロ=ダーウィン」
「ヴィクターだ」
アレハンドロが俺の言葉を即座に訂正したが、俺は無視して言葉を続けた。
「お前は……俺が犯した過ち」
「だから消すってか?」
「あぁ。但し……」
俺はそこで、少し力を緩めた。
「三年前の俺なら……な」
「……?」
そう、三年前の俺なら……
「例えどんな行程であろうと、行き着いた先が悪なら、斬ると心に決めていた。
しかし、三年前……俺は少し変わった。
道を誤っただけだと言うのなら、むやみやたらに斬る必要は意味はない。
だから……」
「だから斬らない……か?
違うだろ。お前は斬りたく無いだけだ。
この俺、親愛なる元・兄。元・アレハンドロ=ダーウィンを……な」
「確かに、違う。だがお前も違う。
故に問う。
貴様は……その新しいチカラとやらを手に入れてから人を殺めたか……否か……」
俺の問いに、コイツは「あぁ、成程」と、妙な声音で手を叩き、答えた。
「クククク、殺ったぜ?何人も……このチカラを教えてくれたヤツを始め……色々と……な」
笑いを含めたその言葉に、俺はたがが外れた。
「キサマ……ッ!
キサマは、弟として……悪を裁く者として……キサマは俺がッ──」
刀に力を入れ直し、眼前の敵に向かって行った。
──しかし。
そこで、俺の時間は止まった。
「絶対零度」
そのたった一言で、俺の全身は凍結し、氷の塊の中に閉じ込められた。
「なぁ、クロス」
何故か目は見えず、アイツの声だけ聴こえる。
「お前は言(ことば)に惑わされ過ぎてんだよ。
弟だの裁く者だの善だの悪だの……どうでも良いんだよ。
要は自分が良けりゃあそれで良い。人間なんてそんなもん。
クロス、お前は天才だ。いつかそれに気付く。
そん時ゃ……」
それから、言葉は続かなかった。
聴こえてきたのは、低い笑い声。
そして虚ろな時間は流れ、俺はルビーと……お前達と出逢った──。
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