第十八章-旅の記憶-

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「それでは先程の妙な感じと言うのは……」 「あぁ、久方ぶりで忘れていた。 あれは間違いなく、学院長の転移の波動だった」 疑問符を浮かべるクロスをよそにユリが確認を取る様に尋ね、ゲームが頷いた。 「……ゲームさん、それの何処が朗報なんですか?」 少し不機嫌な表情を浮かべ、クロスが尋ねる。 「なんだダーウィン、忘れたのか?ここの学院長──リク=イノセンスは、世界有数の魔法使い。 結界のみに於いては間違いなく五指に入る。 ……お前の結界を解けるかも知れない人だ」 ゲームに代わって答えたユリの言葉に、思わず目を見開き、額に手をやる。 「本当か……!?」 「あぁ、偽りはない」 今度はヴィンセントが答えた。 「と言うコトは……」 「クロスも……魔法が使えるようになるってコト……?」 「それって……」 「「ヤッタ」」 部屋の端では、ルビーとスコールがそんな事を言い合って喜んでいた。 ……しかし。 「そんな甘い話じゃないさ」 「正義の言う通りだ」 ジャスティスが二人を制し、イグナスが賛同する。 「私は直に見た訳ではないが、クロス=ダーウィンの結界は、無理に外すと“ヤツ”が来るんだろ?」 「あ……」 「そう……ですね」 イグナスの言葉に二人は声を揃え、綻ばせていた顔を凍らせた。 そう、クロスの結界の内側には、もう一人のクロスがいる。 強大な魔力と破壊的な性格を兼ね備えた、もう一つの人格が……。 「どうするんだ、ダーウィン?」 皆の意見が収まると、ユリが尋ねた。 因みに、クラウンは先程から黙って傍観している。 「決まっている」 そのクロスの表情は……。 「会わせてくれ、そのリク=イノセンスとやらに……」 口元が、確かに緩んでいた。 「分かった。元々そうするつもりで言ったしな。 クラウン、それで良いか?」 「ん……?あぁ、良いぜ。 つーか俺よりその……リクってヤツに訊いた方が良いんじゃねぇのか?」 まだ少し上の空気味でクラウンは答えた。 「それはそうだな。では、行こうか」 『はい』 ゲームに促されるまま、一同は部屋を後にした。 その中で、クロスはある決意をしていた。 (全てはキサマの思惑通り……か。だが、見ていろ……! 俺は、キサマとは違う。キサマの様にはならない! 二つを操り、混ぜ合わせ、新たな一つにしてみせる……。 それが……俺──クロス=ダーウィンの選んだ道……だ)
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