吸血鬼が見た夢

10/10
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/57ページ
 そこは見知らぬ場所だった。  少年は起き上がり、周囲を見つめる。  洞窟か何かだろうか?視界がはっきりしない。  ただ自分が一人で、どうしたらいいのか分からない。 「……あれ?」  足音と一緒に聞こえた声。それに驚く。  それはまだ子供の声だった。 「君、どうしたの?」  分からない、と言おうとして、口をどう動かせばいいのか分からず、呻く。 「捨てられたの?」  とりあえず、首を傾げる。 「分からないの?」  それに頷く。するとその子供は、こちらに手を差し出す。 「じゃあ、うちに来ない?孤児院なんだけど」  よく分からない。ただとりあえず、差し出された手を掴む。  すると引っ張られて、ルーツは外に出た。  眩しい太陽。立ち暗みを起こし、それでも子供に連れられる。 「そう言えば、名前はあるの?」  名前?よく分からない。その意味が。  ただ不意に、浮かんだ言葉があった。 「る…ぅ……つ?」 「るぅつ?ああ、ルーツ君か。僕、サイル。よろしくね」  とりあえず頷いた。そして、手をひかれながら、景色を見ていた。  そこには古びた城が一つ、あった。
/57ページ

最初のコメントを投稿しよう!