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そこは見知らぬ場所だった。
少年は起き上がり、周囲を見つめる。
洞窟か何かだろうか?視界がはっきりしない。
ただ自分が一人で、どうしたらいいのか分からない。
「……あれ?」
足音と一緒に聞こえた声。それに驚く。
それはまだ子供の声だった。
「君、どうしたの?」
分からない、と言おうとして、口をどう動かせばいいのか分からず、呻く。
「捨てられたの?」
とりあえず、首を傾げる。
「分からないの?」
それに頷く。するとその子供は、こちらに手を差し出す。
「じゃあ、うちに来ない?孤児院なんだけど」
よく分からない。ただとりあえず、差し出された手を掴む。
すると引っ張られて、ルーツは外に出た。
眩しい太陽。立ち暗みを起こし、それでも子供に連れられる。
「そう言えば、名前はあるの?」
名前?よく分からない。その意味が。
ただ不意に、浮かんだ言葉があった。
「る…ぅ……つ?」
「るぅつ?ああ、ルーツ君か。僕、サイル。よろしくね」
とりあえず頷いた。そして、手をひかれながら、景色を見ていた。
そこには古びた城が一つ、あった。
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