賤ヶ岳に散る夢 ―激闘―

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石見が陣屋を出ていき、成政は地図上の美濃の国に置いていた羽柴秀吉を示す駒を見つめた。 「しかし、猿はどこへ動くのだろうか・・・。 まさか再び琵琶湖を渡り、直接、小一郎の本軍のもとに行くまいとは思うが・・・」 「今は前田玄以の兵5000も加わっており、その分の船があるまい。 それよりも、美濃の方は、何やら雲行きが怪しいぞ。雨かのう」 利家は東の空を見つめながら、ふと呟いた。 そして、いつの間にか、忍の四井主馬が側に来ていた。 「利家様、その通りにございます。 今朝から美濃は激しい大雨が降っており、そのため街道はぬかるみ、羽柴勢は動きが取れぬようでございます。 雨は今日いっぱいは続くかと・・・」 主馬の報告を聞いた成政は勢いよく立ち上がった。 「今が好機だ! 猿が美濃で動きが取れぬのならば、我らはここにいる意味は無い。 又左、出陣じゃ!」 「・・・うむ。 ならば貴公は先に行っててくれ。 今、慶次郎に越後の上杉の様子を探らせておる。 上杉が動かぬとわかり次第、わしも出陣致す」 「相わかった。では先に参る」 早く出陣したく、うずうずしていた成政は利家の言葉をよく確認もせずに陣屋を飛び出していった。
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