賤ヶ岳に散る夢 ―激闘―

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佐々成政隊が木之本を出陣した頃、柴田勝家率いる北国軍本隊は、鶴翼の陣で護りを固めた羽柴軍本隊への総攻撃を加えていた。 「まったく・・・玄蕃め、奇襲を悟られおって。 手筈通り、鶴翼の陣を敷く、敵の横か背後を突けば、敵は総崩れとなったはずじゃ」 勝家の隣で、甥の柴田勝政は思わず愚痴をこぼしていた。 半時前、佐久間盛政・柴田勝豊の別働隊12000は羽柴軍本隊の左翼に迫っていた。 この時点で、勝家の本隊はまだ、羽柴軍本隊への攻撃前であった。 出陣前の軍儀では、勝家の本隊が攻撃を加えた後で、佐久間盛政の別働隊が横または背後から奇襲を加える作戦だった。 しかし、盛政は焦って本隊より先に羽柴軍への攻撃を仕掛けた。 それも、わざわざ羽柴軍の前面に迂回してであった。 その際、後退してきた筒井順慶隊、さらには丹羽長秀隊と遭遇した。 北国軍別働隊は筒井隊、丹羽隊を退けたものの、その際、2000の死傷者を出したが、盛政はそのまま羽柴軍本隊への攻撃を命じたのだった。
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