賤ヶ岳に散る夢 ―激闘―

45/51
前へ
/241ページ
次へ
繁と幸一の話によると、2人が‘あの世界’に行ったのも、悠馬と絢と同じ20歳の時だったという。 病棟の休憩室にやって来た4人は、絢が売店で買ってきた缶ジュースを前に、再び話し続けた。 「実はな、あの世界は俺達の住む世界の過去じゃ無いんだよ」 繁の思わぬ言葉に、悠馬と絢は「え!?」という表情を浮かべた。 「俺と幸一が散々、いじくりまわしたのに、現代には何の痕跡も残ってない。 ということは、あの世界は今この世界の過去じゃなく、まったく別の時間軸に存在する世界ということなんだろうな」 「だけど歴代の天皇や年号とか、時代の中軸になるものは一緒だ。 馴染みやすい世界だったろ? せっかくの大学の長い夏休みだ。もう一度、あの世界に行ってみたらどうだ?」 幸一の何気ない提案に絢が怒った様子で反論した。 「何それ!?パパ本気で言ってるの? 現に悠馬はこうやって大怪我して・・・。 あんな危ない世界に行くことを普通、娘達に勧める!?」 「・・・そりゃ、まあそうだけどな。 ただ、この世界みたいに平和過ぎて人がなかなか成長しない世界よりも、あの世界みたいに多少なりとも危機感のある世界で過ごすのも、良い経験になるし、人として成長すると思えるんだよな」
/241ページ

最初のコメントを投稿しよう!

850人が本棚に入れています
本棚に追加