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放課後の校舎裏。
そんな定番の場所で、俺は江戸原晴海(えどはらはるみ)を待っていた。
手には小さな小包とメッセージカード。
心臓は今にも爆発寸前だ。
俺は今、運命の瞬間を迎えようとしていた。
「あっ、祐樹(ゆうき)。こんなところにいたんだ」
茶色の髪を短く揃えた、活発な女の子。
よく言えば活発で元気。悪くいえば強気でわがまま。
そんな江戸原晴海に、俺は恋をしてしまった。
「よ、よう。悪いな。こんなところに呼び出しちまって」
平静を装っているが、心臓の鼓動は早すぎて聞き取れないほどだ。
「なんなのよ?この忙しい時に。用件は早く言ってよね」
「悪い悪い。でも、今日じゃないと駄目でさ」
「今日じゃないと駄目……?」
晴海は顔をしかめて、今日が何の日だったか思い出している。そんな顔も、惚れてしまった俺からしてみれば、愛しくて仕方無い。
「なに笑ってんのよ?」
「あ、ああ」
知らず顔がニヤけていたようだ。
晴海のその言葉で俺は現実に引き戻された。
少しの間ペースを落としていた心臓の鼓動がまたスピードを上げていく。
「今日は3月14日……ホワイトデーだ」
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