校舎裏の出来事

5/5
前へ
/7ページ
次へ
「ばっ、バカ野郎。泣いてなんかねーよ」  俺は急いで晴海から身体を離して涙を拭き、つよがってみる。 「ふふん。そんなこと言っても私見たもんね」  晴海が得意そうに胸を張る。  それは心底嬉しそうに。  あぁ、もし俺の涙がコイツの笑みを作ったのなら、俺はいくらでも泣いてやれるな、とそう思った。  でも、ほんの少し悔しくて。だから意地悪を言ってみた。 「お前も思いっきり泣いてたじゃん。それはもう赤ん坊のようにぎゃあぎゃあと」 「泣いてないもん!」  晴海は顔を真っ赤にして怒る。 「はは、冗談だって」 「……っ!」  それを言われて、晴海はまた顔を赤くする。トマトみたいだなって言ったら、また怒るかな。 「もういい!帰る!」  俺があまりにも笑い続けるので、晴海は本当に怒ったみたいだった。 「ごめん。ごめんってば!」 「……ぷっ」 「あっ、お前今笑っただろ!演技だったな!?」  そして俺達は二人で笑いあった。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加