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「閣下、出港準備まもなく完了。予定通り出撃できます。」
「わかった。」
パリサー参謀長の報告を受け、Z部隊司令官、トマス・フィリップス中将は頷いた。
「いよいよ、ですな。」
《プリンス・オブ・ウェルズ》艦長、リーチ大佐が笑顔で応じた。
「頼むぞ、艦長。相手は日本海軍だが、完調に仕上がったの本艦の力をみせてやってくれ。」
「お任せを。相手がドイツ海軍ではないのが残念ですがね。」
《プリンス・オブ・ウェルズ》の実戦参加は、これがはじめてではない。この年の5月に、独戦艦と砲撃を交えている。ただし、この時、工事はまだ終わっておらず、艦内に工員を乗せたままの戦闘となった。無論、訓練など行っていない。
結果は、惨敗。
大きな損害を受けた《プリンス・オブ・ウェルズ》はドック入りを余儀なくされた。またこの戦いでリーチ自身も負傷している。
あれから半年余り。 訓練の末、乗組員の技量は上がっている。
しかしリーチは、自分の艦が完調に仕上がっているとは思っていない。修理完了後の8月には、米大統領との会談に向かう首相チャーチルを乗せて、カナダ西部のニューファンドランド島へ向かっている。
その後10月には、チャーチル直々の指示で、シンガポールに向かっている。そのため、腰を据えた訓練が出来ていないのだ。
しかし泣き言は言っていられなかった。
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