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彼の目は貪欲で底がなく、昏い闇を潜ませていた。
しかし知己と思しき人には恵まれて、いつも囲まれ、笑っている。
そんな印象を遠目で見て持っていた。
私は知性もなく、秀でた取り柄もない、ただなんとなくで生きてきた部類であるために劣等感も甚だ大きい。
大人とも言えず子供ともいえない、微妙な年頃で浅はかな考えの私にとって彼を羨望の眼差しで見つめるのも至極当然のことだった。
いや、私のような生徒だけではない。
教師でさえ、彼には何か感じるものがあったのかもしれない。
それほど彼の存在感は大きく、周囲を飲み込むほどだったのだ。
果たしてそれは魅力と呼ぶべき彼の資質だったのだろうか。
もしかしたら小さな昆虫を甘い蜜でおびき寄せるハエトリグサのような捕食者の仕組まれた餌だったのか。
周りの蠅は気が付かずにただ本能のままに食されに行く。
そんな想像をして、私はぶるりと身震いをした。
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