愛しき待ち人

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私が造られたのはずっと昔。 貧しい人形職人の手によって造られた。 名前はない。 付ける前に戦争に行ってしまったから。 私は、彼の最後の作品。 彼も“それ”を知っていた だから私を造った。 どの家に渡っても奇麗にしてくれるように、どの家に渡っても恥ずかしくないように、いつも以上に手を懸けて、丁寧に、時間を掛けて.....。   私が造られたのはずっと昔。 彼が戦争に行ったのもずっと昔。 解っているけれど、きっと死んでしまっているかもしれないけど、それでも、私は彼を待っている。   小さな工房から遠く離れた異国の地で......。       。
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