一年目 引越し

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 ガタガタと荷馬車が揺れる。舗装もなく、ただ草をむしっただけの道だ。無理もない。  町からは少し離れた草原。風は遮られる事なく、吹き抜けていく。  「引越しにはいい天気だ。なぁ、タリュー」  男は馬車の荷台を覗き込む。そこには、小さな女の子がチョコンと座っていた。  男の言葉に、女の子はコクンと頷く。胸につぎはぎの目立つウサギのぬいぐるみを抱いていた。  「そうか、お前もかタリュー」
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