消えかかる心の灯火

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優しい言葉に、涙が流れる。声も出さずに涙を流す私に、チーフは自分の事を話だした。 この店でチーフになるまでの経緯。男にだまされ、かなりの借金を背負わされ、この店の社長に拾われた事。借金返済していく為に、ここで働きだし、社長と愛人関係にある事。社長の奥さんが、チーフと姉妹である事…。この店に来る子達はみんな、苦労したあげくに、店へとたどり着く事。辛い気持ちが分かるから、チーフがみんなに優しく接する事が分かった。チーフはいつも、観音様のように微笑んでいる理由が分かった気がした。 私は、今の辛さをチーフに伝えた。 黙って聞いてくれながら、空いたままの皿にツマミをたくさん盛ってくれ、グラスに酒をそそいでくれて。 「離婚は考えてないの?」突然の言葉に答えられずにいると、 「私は結婚もした事ないし、みんなに離婚を勧めたい訳じゃない。でも、今のままで、瑠香と子供が幸せになれるとは思わない。今すぐにとは言わないけれど、今の状況が結婚してから二年も続いている。結婚前からしたら五年。そろそろ子供の為にも決断するべきじゃない?…離婚しても、私や店が、バックアップしていくから。一人で悩まないで。みんなが、家族だよ。」
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