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夕日に紅く染まった教室。窓から流れてきた風が、凜の長い黒髪をふわり、と揺らした。
「あれ? 凜、それピアス?」
問いかけた俺に顔だけ向けて、凜はいつもの明るい表情で言う。
「リスカよりは健康的かと思って」
「え?」
「なぁんて、ね」
驚きに目を見開く俺に返された冗談めかした笑顔。その表情は、あまりにもいつも通りだった。だからこそ俺は気付けなかったんだ。その言葉の奥底にある、もっとも凜が伝えたかった思いに。
二日後、凜が死んだ。
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