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ヒゲづらの男が白い息をモウモウと吐きながら、
猛吹雪の中ソリを引っ張ってる。
ソリの上には怪我をした男。
両足があり得ない方向に曲がっている。
「もうすぐだぞ!」
ソリをひく男は声をあげる。
「あぁ頼む!
悪いな、最後の最後まで!」
「いいってことよ!」
ソリは周りに風も雪も防ぐ岩陰もない、
ただっ広い所に着いた。
「ここならおあつらえむきだ!」
「あぁそうだな!」
そういうとソリの男はブランデーと煙草を怪我男に渡した。
「恨むなら恨んでくれ!
その方が生きて帰って悪い事があったらお前のせいにできる!」
「あははは!
じゃあせいぜい恨ませてもらおう!」
そういうとソリの男は怪我男をソリからおろし、
振り向き振り向きしながら怪我男から遠ざかった。
山で助からない怪我をした時、
他の人の救助確率をあげるため見殺しにする場合がある。
そして、
怪我男はもしもの時に備え、
他の人の『緊急食料』になることを申し出た。
「はは!神よ!
お前のくそくらえのケツに乾杯だ!
他のヤツラも『食料』にしたらそのセクシーなケツ蹴り上げてやる!」
怪我男は一気にブランデーを飲み干した。
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