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「明日だね…帰る日まで…早かったね。実家に戻っても、絶対連絡するよ!死ぬ訳じゃないしね、また会えるよ!」と、受話器越しにわかるくらい明るく言った。 彼女も、何気なく相づちをうっている。それから、思い出話や、これからの未来の話など続けた。 その間の空気というか、あの雰囲気は独特で、勇気の無い私には耐えきれない重圧を与えてくる。その重圧に耐えながら、いつ気持ちを伝えようかタイミングを計っていた。が、今思えばタイミングなんて必要もなく、ただ伝えれるしか無かっただろうと思う。 帰郷の前日なのだから。 一時間程経ったか、話も煮詰まり、何とも言えぬ間が増え、重圧がますます強くなり、切羽詰まった状況で私は絞り出すような声で言った。「あっ、あのさ、俺さ好きだったんだ。ずっとね。けど、俺彼女いるし、君には彼氏がいるしね…。付き合いたいと思ったけど…。無理だとは思ってたけど、伝えたくて。」と言った。 彼女は「私も好きだったよ。でも、彼女いたの知ってたから…。これからも友達でね。」そう言った。その言葉を耳にした私は、今まで心の重圧になっていた気持ちを吐き出したはずだったが、替わりに胸の中の芯のようなものが、熱く、ぐっと締め上げらるような感覚を覚えた。 「そうだったんだ、嬉しいよ。でも何か複雑な気持ちだよ。今度付き合えたら付き合おうね。」と、なんだか煮え切らない答えをした気がする…。 そんな話で電話を切った。 …何とも言えない不甲斐ない自分がそこには残っていた。 すぐに、彼女に会いに行きたなったが、行く術もなく…帰郷を止める力も無く…出来ることと言えば自責の念にかられ自分を責める…そして泣くだけだった。 それだけだった。 その翌日、彼女は帰郷した。 私の胸に残したまま。 そして、恋は終わった。
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