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ちり―ん
ちり―ん…
暗闇の中、ほんの少しの灯り火の中、聞こえてくるのは鈴の音色。
――なんだか、寂しい音だな。
と、まぁるい月を見ながら少女は思う。
――月が綺麗…。
そよそよと涼しい風が、土や緑の匂いを乗せて身体を吹き抜ける。
――コトン――
少女を乗せた、綺麗に飾ってある箱を地面に下ろす。
少女を担いできた男たちは、少しオドオドと周りを見渡しながら、灯り火と共に、今来た道を戻っていった。
――あぁ、真っ暗…。
ポツンと一人残された少女は、じっとその場で目に焼き付けるように、近くの花や樹、月を見つめた。
―――私は死ぬのかな。
心の中で思う。
いや、死ぬのだと覚悟は既に出来ているのだ。
―――覚悟はできてる。……私が生け贄と選ばれた時から。
自分の家に、黒い羽根が刺さっていたことが生け贄に選ばれた証拠。
少女の家には、父と母と弟が一人いるだけだ。
少女以外に娘はいない。
それだけで自分が選ばれたのだとわかった。
――昔話程度にしか思っていなかったのにな…。
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