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村で、昔から生け贄が捧げられるという話が受け継がれていた。
何に捧げるのかはわかっていない。
神か。
鬼か。
悪魔か。
そこのところは全くわかっていない。
ただ、生け贄を出さないでいると、大きな災害に見舞われるのだと、そう言い伝えられている。
――じゃりっ――
ビクッと肩を震わせ、音がした方を見る。
死を覚悟はしているが、やはり怖いものは怖い。
目を細め、よく見てみる。
―――誰?
月明かりが徐々に影を照らしていく。
「人間……なの…?」
人間の男の子だ。
しかも、自分と歳が変わらないように見える。
いや、そう見えるだけでそうではないのかもしれない。
神様のような神々しさは見られない。
鬼のような角も見られない。
悪魔のような黒い羽根もまた見られない。
不安が胸に募るが、それと同時に胸の鼓動が高まった。
恐怖ではない。
胸の高まり。
彼の姿に魅入ってしまっていたのだ。
漆黒のサラサラと流れる髪。
整った顔立ち。
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