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何より瞳が……綺麗。
鋭く、刺すような…だけど吸い込まれてしまいそうな瞳。
「俺は人間だ。」
ハッと我に返る。
さっき自分がした質問に答えてくれたのだ。
――でも何故?
何故人間の男の子がこんなところにいるの?
「あの、ここにいない方がいいと思います。早く帰って下さい。」
「なんでお前にそんなこと指図されなきゃならないんだ。」
ムスッと不機嫌そうに言う彼。
「えっと、指図とかじゃなくて、ここは生け贄がいるべき場所なんです。だから、早く貴方は帰った方がいいと思うんです。」
「へぇ…、生け贄。お前がか?」
「……っ、そう…です…。」
いざ、お前が生け贄かと問われると言葉に詰まる。
受け入れたくない事実を受け止めたくないのかもしれない。
「そうか。でも残念だな。お前は生け贄ではない。」
「……えっ?」
――私が生け贄ではない…?
それは嬉しい言葉だが、何故彼がそんなことを言い切れるのだろう。
「お前の家に黒い羽根をつけたのは、我々だ。」
なんで貴方がそんなことわかるの?と聞こうと開けた口が、彼が先に言葉を発してしまったため、本来の目的を果たせないでいる上に、開いた口が塞がらなくなってしまった。
――黒い羽根をつけたのは、我々だ……?
彼が言った言葉を心の中で復唱する。
「な…んのために?」
ごくん、と唾を飲み込む。
「………それは後で話そう。とりあえず俺について来い。」
そう言って彼は踵を返した。
ポカン、としてると
「早くしろ。」
と言う言葉に、慌てて後を追いかけた。
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