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「あのっ……。」
「なんだ?」
「えと…どこ行くんですか?」
「…行けばわかる。」
彼は振り向かない。
どんどんと先へ進んで行くため、少女は少し小走りになる。
「…じゃあ、何のためにあたしはそこに行くんですか?」
「行けばわかる。」
「……あたしは生けにえじゃないんですか?」
「さっき言っただろ。生けにえじゃない。」
「んじゃ…。」
「少し黙れ。」
その言葉に少女は聞きたいことをグッと我慢する。
「最後に一つ教えて下さい。」
「なんだ。」
彼は相変わらず、彼女を振り向かないで返事をした。
「お名前を教えて下さい。」
ピタッと足を止めたかと思うと、初めて彼は少女を振り向いた。
「…瞬。」
「…瞬…さん?」
「さんはいらない。呼び捨てで構わない。」
「瞬…。わかりました。あたしの名前は…。」
「羽都 ゆりあ、だろ。」
本日二度目。
開いた口は何のために開かれたのかわからない。
だが、その開いた口をそのまま動かす。
「なっなんで知ってるんですかっ?!」
「さあな。」
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